本ページでは、野村総合研究所が公表した2017年の富裕層の割合と特徴を、2015年の調査と比較して解説します。
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富裕層の定義と2015年の割合
富裕層の定義と2015年の割合は、こちらのページで解説しています。このページでは定義のみ再掲します。
超富裕層 | 純金融資産5億円以上 |
---|---|
富裕層 | 純金融資産1億円以上5億円未満 |
準富裕層 | 純金融資産5,000万円以上1億円未満 |
アッパーマス層 | 純金融資産3,000万円以上5,000万円未満 |
マス層 | 純金融資産3,000万円未満 |
2017年の富裕層の割合
2017年の富裕層は以下のような割合になっています。
純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数:(出典:野村総合研究所のNews Release)
これだけだと分かりにくいので、2015年と同様、各階層の割合を計算してみました。各階層の世帯数の合計を100%として計算しています。(小数点2桁目を四捨五入)
階層 | 2017年 | 2015年 |
---|---|---|
超富裕層 | 0.16% | 0.14% |
富裕層 | 2.20% | 2.16% |
準富裕層 | 6.00% | 5.95% |
アッパーマス層 | 13.41% | 12.86% |
マス層 | 78.23% | 78.88% |
それぞれマス層が圧倒的ではあるのですが、2015年に比べて2017年は上位の階層に割合がシフトしていることが分かります。
超富裕層と富裕層が大きく増加
こちらの表を見ると、超富裕層、富裕層の増加が目立ちます。
純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移(2000年~2017年の推計結果):(出典:野村総合研究所のNews Release)
理由は、以下のとおりに推測されています。
富裕層および超富裕層の保有する純金融資産額の増加は、景気拡大と株価上昇によって富裕層および超富裕層の保有資産が拡大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に移行したためと考えられます。また、富裕層・超富裕層である親や祖父母からの相続や、生前贈与を受けて富裕層・超富裕層になった世帯、および自ら起業して新規株式公開(IPO)や事業売却により資産規模を拡大した世帯も増えていると考えられます。
親リッチの傾向分析
親リッチとは
上述の富裕層・超富裕層の親とまではいかないかもしれませんが、裕福な両親を持つ「親リッチ」と裕福ではない両親を持つ「非親リッチ」との傾向と分析を行っています。
なお、親リッチの正確な定義は以下のとおりです。
アンケートで、親の生活程度を「中の上以上」と回答し、親が自宅以外の不動産(国内外)、株式・債券・投信などの金融商品、高級車、美術品・骨董品、金地金・高級貴金属のいずれかを保有していると回答した20代~50代の男女
親リッチと非親リッチの金融リテラシーの傾向
まずは、親リッチと非親リッチの金融リテラシーの差を見てみます。
親リッチと非親リッチの金融リテラシー、金融情報感度、金利感応度の特徴(男女別):(出典:野村総合研究所のNews Release)
各項目の定義は下記のとおりです。
金融リテラシー(高):金融に関する5つの質問(金利、複利、インフレ、リスク・リターン、分散投資)について4問以上正答した人の割合
金融情報感度(高):「新しい金融商品が出たら、積極的に情報収集する方だ」という考え方に対し、「あてはまる」もしくは「ややあてはまる」と回答した人の割合
金利感応度(高):「利回りがよければ金融機関を変えても良い」という考え方に対し、「あてはまる」もしくは「ややあてはまる」と回答した人の割合
上記の表から、特に「金融リテラシー」の差が目につきます。親が裕福な場合、子供にもお金の教育がなされていることが示唆されます。
お金持ちになるためには、お金のことを知る必要があります。親が裕福だと相続を通じて子が裕福になるという面もありますが、子の金融リテラシーが高まることで、子自身の”裕福になる力”が高まっているとも言えそうです。
親リッチと非親リッチの家族の結びつきの傾向
次に、親リッチと非親リッチの家族の結びつきの差を見てみます。
家族との関係に対する考え方:(出典:野村総合研究所のNews Release)
親リッチは男女とも親への信頼が強く、子どもへの教育投資にも熱心です。家族間の精神的な結びつきが強いと言えそうです。
一方で、親リッチの男性は、夫婦共働きや夫婦それぞれが貯蓄・資産運用を行うなど夫婦間の経済的自立について積極的ですが、女性はその逆です。あくまで推測ですが、親リッチな女性はお嬢様タイプが多く、旧態依然とした夫婦関係、つまり男性が稼いで女性は家庭を守るという意識が強い傾向があるのかもしれません。
そして、自分または自分の配偶者が海外で就労することに抵抗がある割合は男女ともに親リッチの方が低いです。海外で就労することは当然キャリアアップに繋がるでしょう。また、子供を留学させることに対する抵抗も親リッチの方が低いのではないかと推測されますね。
まとめ
- 2015年に比べ、2017年の超富裕層・富裕層は増えている
- 富裕層・超富裕層である親や祖父母からの資産移転で富裕層・超富裕層になる羨ましい世帯も存在
- 親が裕福な子は金融リテラシーが高い傾向がある。そのため、相続によって裕福になれるだけでなく、”裕福になる力”自体が高い
- 親リッチの方が、親を精神的に頼る、子供の教育にお金をおしまないといった点で家族間の精神的な結びつきが大きい